Bill Evans とScott LaFaroのPianoとBassの対話的Jazz

1950年代、1960年代のJazz Pianoを語る上で外せない存在Bill Evans (Piano)ですが、Scott LaFaro (Bass)との対話的なインプロビゼーションが凄く、初期のBill Evans Trioの作品はJazz名盤に挙げられています。綺麗な旋律とPianoBassで会話しているかの様な演奏に、Paul Motian (Drum)のブラシワークが絡んで最高のPiano Trioの演奏が楽しめます。Scott LaFaroは、後に長年Bill Evansと行動を共にしたEddie Gomez (Bass)とよく比較されます。私は圧倒的にScott LaFaroが好きです。今回はBill EvansScott LaFaroのインタープレイが堪能出来る作品を紹介します。

Pianoのスタイル、Bill Evans派かBud Powell派か

Bill Evansを語る上で外せないPianoのスタイルを解説します。大きく分けてBill EvansBud Powellかに分かれます。Bill Evansのスタイルは、クラッシクをJazzに持ち込んだ第一人者です。白人のBill Evansは、フランスの作曲家DebussyRavelの影響を受けてJazzに導入しました。このスタイルは非常に斬新的で、数多くのPiano Playerに影響を与えました。Piano Playerだけにとどまらず、Guitar PlayerBass Playerにまで影響を与えました。

Bud Powellは黒人独特のファンキーなノリ、躍動感が凄くてBill Evansのスタイルとは対照的です。踊りたくなるようなリズム感が凄く、跳ねる様な強弱のつけ方など黒人Piano Playerの中では群を抜いたファンキーさが魅力でした。Bud Powellも多くのPiano Playerに影響を与えました。黒人殆どがBud Powellのスタイルが多く、中には途中で演奏を止めて本当に踊り出す奇妙なThelonious MonkというPiano Playerもいました。

Bill EvansのスタイルもBud Powellのスタイルも両方格好いいのですが、黒人音楽の中で白人のBill Evansが台頭してきて注目を浴びました。Miles Davis Bandに参加していましたが、Bill Evansのみが白人で他のメンバーは全員黒人ということもあって、アルバム1枚のみで脱退してしまいます。その唯一参加した『Kind Of Blue』(1959)Jazz名盤になっています。Bill Evansはユダヤ系の血を引いていて、差別されていたりもしていました。また、非常に陰鬱な性格もあったために、黒人バンドに加わるよりも自身がリーダーバンドを始めたいとの希望もあっての脱退でした。

Scott LaFaroとEddie Gomezの比較

Jazz Bassは、4ビートで裏を強調しながら1小節に4つの音を置くランニングが基本です。殆どのJazz Bass Playerがバッキングに徹して、ソロを取る時にのみ自由に演奏をします。Scott LaFaroEddie Gomezのスタイルは、ランニングを基本にしながらも、ハイトーンを使って自由にバッキングを行います。2人とも同じ様なスタイルですが、今のJazz Bass PlayerRock Bass Playerは、当たり前の様にハイトーンを使って自由に演奏していますが、1950年代や1960年代のJazzでこの様なスタイルは非常に斬新でした。Rockで代表的なのは、あのスーパーグループCreamです。Guitar、Bass、Drumが主張しあっていて、時折ケンカしている様な錯覚をに陥る演奏です。

好みにもよりますが、Scott LaFaroEddie Gomezを比較した場合、私はScott LaFaroの方が断然好きです。もちろんEddie Gomezが下手という訳ではありません。ただ、Eddie Gomezはピッキングが強すぎて弦と指板がぶつかる音がするのです。バチバチという音です。Jazzを愛するリスナーは、このバチバチという音もBassの音の一部と捉えているのですが、私はどうしても耳障りで好きになれません。

私は一時、超有名Drum Playerと一緒にバンドをやっていました。音楽に対して非常に厳しい方で、何を言われるかおっかなびっくり演奏をしていました。ライブの時にその方のリクエストで、ピッキングを強く弾いて欲しいと言われました。Eddie Gomez的な音になりましたが、その方は非常に聴きやすくて叩きやすいと言っていました。その方のプレッシャーから、練習はめちゃめちゃしたので満足のいくラインが弾けました。後からライブ音源を聴きましたが、プレイ的にはベストプレイなのですが音が好きでは無くて私的にはこのバチバチという音さえなければと思ってしまいました。

Portrait In Jazz (1959)

スタジオアルバムです。Miles Davis Bandから脱退後の初アルバムで、モードの手法を取り入れた作品です。モードの手法は、主にクラッシクで使われていました。DebussySatieが得意とした奏法で、坂本龍一さんもDebussySatieに強く影響を受けています。スタンダードナンバーとオリジナルナンバーが混在している、素晴らしアルバムです。このアルバムからBill EvansScott LaFaroの音の対話が始まりました。CD化されるとボーナストラックが収録されますが、リストはオリジナルLPの曲順です。

1、Come Rain Or Come Shine

2、Autumn Leaves

3、 Witchcraft

4、When I Fall In Love

5、 Peri’s Scope

6、What Is This Thing Called Love?

7、 Spring Is Here

8、Some Day My Prince Will Come

9、Blue In Green

Explorations (1961)

このアルバムもスタジオアルバムです。前作の延長上にありますが、非常に小慣れた感じがして安心して聴けるアルバムです。しかし前作よりも評価が低いのは不思議な感じがします。前作では、有名な曲を多く演奏しているからかもしれません。

1、Israel

2、Haunted Heart

3、Beautiful Love

4、Elsa

5、Nardis

6、How Deep Is The Ocean?

7、I Wish I Knew

8、Sweet And Lovely

Sunday At The Village Vanguard (1961)

Village Vanguardというクラブで行われたライブ盤です。ステレオ録音の初期ですが、各楽器が偏って聴こえて奥行きと広がりが感じられて当時のクラブの雰囲気が感じられるすごいアルバムです。絶対に聴いて欲しいアルバムです。とにかく各楽器に対話が楽しいです。

1、Gloria’s Step

2、My Man’s Gone Now

3、Solar

4、Alice In Wonderland

5、All Of You

6、Jade Visions

Waltz For Debby (1961)

絶対に聴いて欲しいアルバムその2です。前作同様Village Vanguardでのライブ盤です。Bill Evans作曲のタイトル曲『Waltz For Debby』のメロディーの綺麗さが素晴らしいです。この曲は多くのミュージシャンにカバーされており、私もカバーしました。『Sunday At The Village Vanguard』と同じライブ盤なのにこちらのアルバムの方が有名なのは『Waltz For Debby』に尽きると思います。1960年代のクラブの音空間が感じられるアルバムです。今聴いても斬新で新鮮です。前作はScott LaFaroの色が強かったのですが、今作はBill Evansの色が強く出ています。

1、My Foolish Heart

2、Waltz For Debby

3、Detour Ahead

4、My Romance

5、Some Other Time

6、Milestones

Scott LaFaroの突然の死

Village Vanguardのライブの11日後、Scott LaFaroは交通事故で亡くなってしまいます。『Sunday At The Village Vanguard』『Waltz For Debby』Scott LaFaroが亡くなった後に発売された作品で、Scott LaFaroの最後の録音になりました。

Bill EvansScott LaFaroの死にひどくショックを受け、しばらく演奏が出来ないほどでした。Bill Evans Trioは活動休止状態になりました。活動休止中に何作かのソロのレコーディングやセッションを行いますが、全てお蔵入りにしています。もともと陰鬱な性格だった上、相棒に死はBill Evansをひどく傷つけた様です。

Miles Davis Bandの頃からドラックに手をつけて、亡くなるまでドラッグから手を切れなかったBill Evans。1980年にオーバードラッグで亡くなってしまいます。今の時代までBill Evansのアルバムが聴かれているのは、すごい革新的なPianoと綺麗なメロディー、クラッシック的Jazzの典型だからでしょう。

Bill Evansの作品は、外れがありません。どのアルバムを聴いても素晴らしいのですが、やはり『Sunday At The Village Vanguard』『Waltz For Debby』は外せません。ノリノリのBe Bop Jazzとは違った綺麗でクラシカルなJazz。早く亡くなってしまったのが本当に残念で、もっと作品を残して欲しかったミュージシャンです。

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